在エルサレム仏国領事のなりすまし事件

イラン政府が結社の自由の抑制、インターネットからの遮断、国民の殺害による抗議者の弾圧が明るみに出る前に、影で抗議者弾圧の戦略を企てていました。

同府によるサイバー戦争の中から、今年の夏に起きたフランスが関わる一つの事件を紹介したいです。

2019年07月23日に、在エルサレム仏国領事館が同館の領事がツイッター上でなりすましを受けたことが公式声明によって分かりました。

公式声明 1 によりますと、在エルサレム領事(Pierre Cochard 氏)のなりすましのツイッターアカウントが発見されました。同氏は領事の公式の SNS アカウント以外は使わないため、他のアカウントによる発信を見かけたらご注意下さいと呼びかけています。

なお、このなりすまし事件は同偽アカウントから複数のツイートが配信され拡大した後に発見されました。

なりすましの意図

Pierre Cochard の偽ツイッターアカウント

Pierre Cochard の偽アカウント。(その他の偽ツイートのスクショを見る

7月17日、6時16分に @pierre_cochard_ というなりすましアカウントから下記のメッセージがツイートされました。

J’ai été surpris par une nouvelle reçue de la part d’un ancien collègue avec qui je travaillais à Téhéran. Maryam Radjavi, la codirigeante de l’Organisation des moudjahidin du peuple d’Iran, une des plus opposées au régime iranien, s’est rendue en Israël.

訳:元同僚に教えてもらったニュースに驚いた。 Maryam Radjavi さん、イラン政権に最も反対するイラン人民ムジャーヒディーン機構の共同リーダーがイスラエルを訪ねたそうだ。

その後、アバウトなフランス語で、同アカウントから4つのツイートが連続でその旅行について語ります。

Rudy Giuliani さん(トランプ大統領と Boaz Rodkin 在アルバニアのイスラエル大使の弁護士)によって手配された会は6月17日に行われる予定だったそうです。

その際、 Radjavi さんは「イランの核開発計画についてムジャーヒディーンと既に協力したことがある Mossad 会長の Yossi Cohen さんとイスラエル首相」と面会する予定があったそうです。

(偽ツイートは以上です)

7月19日に、 Radjavi 氏はイランが創造した「イランのレジスタンスに対する嘘」をツイッターで批判します。

しかし、なりすましアカウントのツイートは既に拡大してしまいました。

イラン政府の仲間たち

イラン政府に賛成するフランスの記者の一部はリツイートしてコメントします。

訳:驚かない。機密情報をムジャーヒディーンにバラすのは同じ人たちなのでは?

イランのニュースサイト、Mehr News 2 と PressTV は本件について記事を書きます。イラン政府に近いメディアとその仲間たちは偽ツイートを参照して同じくニュースを報じます。

仏ル・モンド紙 3 によりますと、この事件はイランによる大規模の偽情報ネットワークに関連している可能性があるそうです。

与党はレジスタンスによる転覆を恐れているため、このような偽情報を拡大しようとしていると思われます。

政府反対者に対して偽情報という武器

7月23日に、ケドルセはツイッター社に削除申請をして、同日、偽物のツイートが削除され、アカウントが停止されました。

しかし、アカウントについて調べますと、面白いことが分かりました。そのアカウント自体は2013年12月に作られたことが分かりました。つまり、 Cochard 領事が選任される3年前です。当初は正常なアカウントであって、英語で野球についてのツイートがほとんどでした。その後、いつアカウントが乗っ取られたかは不明ですが、少なくとも今年の5月からツイートの内容が怪しく激変して、フランス語で政治の話になりました。投稿頻度も増えたように見えます。Cochard 領事の名前をなりすましたのは偽ツイートを配信した日の数日前のようです。

デジタル治安の専門家である Ohad Zaidenberg 氏によりますと、

このやり方はイラン政府らしい。二年前からイランはハッキング(乗っ取る行為等)と偽情報に力を入れてることが分かった。外国の公アカウントをなりすましてイラン賛成の偽情報を拡大するのも一つの手段だ。今回乗っ取られたアカウントの後ろには、何百人のなりすましのアカウントを管理している組織があることは有り得る。4

SNS そのものを操作するというロシアらしい戦略と違って、イランの偽アカウントはより細かくて目立たない。目的は公の人とメディアを騙すことで、影響のある戦略をたてることだ。

National Council of Resistance of Iran (NCRI、 ペルシア語: شورای ملی مقاومت ایران 、スラーイェ メリーエ モカーウェーマッテ イラン?)はムッラー賛成者の SNS の使い方に注意を呼びかけています。

イスラム革命防衛隊とイラン情報省はインターネットを使って、誤解を招く情報を広め、嘘を広め、反対を悪魔化し、そしてテロ行為への道を開く。

サイバー戦争は戦争だ

夏の戦略はバレて間もなく、イラン政府は新たにフランスの政治家のなりすましを行いました。今回は Alexis Kohler エリゼ事務局長5をなりすまして「人民ジャーヒディーンが間もなくフランスから追放される!」と堂々にツイートを発信しました。 翌日に、フランス政府はツイートが偽物であることと否定しました。6

Alexis Kohler の偽ツイッターアカウント

戦略は全く同じでした。ツイッターアカウントがない政治家を狙って、乗っ取られたアカウントを使ってツイートを発信してイラン賛成のメディアはそれらを引用してニュースを拡大しようとしました。

大規模の偽情報ネットワークが存在することを否めない一方、ツイートの仕方がかなり雑でした。連続の6ツイートは朝4時06分(パリ時間)に同時投稿されました。 Kohler 局長がどんだけ早起きの方か知りませんが、せめてイランのタイムゾーンを隠せば良いのでは?